secret 86  overture

お正月はあっという間に過ぎて、冬休みもあっという間だった。
初詣以外でも七香ちゃんたちと遊んで。
それに―――先生にも呼び出されたりして。
先生は映画観賞が趣味らしくって、だいたい夕食を食べて映画見て、それからって流れが多かった。
それは冬休みが終わったあとも。
週末は先生のところに泊まりに行くことが多くなってた。
先生は私のことなんて″なんとも思ってない″から、一緒にいるのにも気が楽だっていうのもあったのかもしれない。
一人で過ごすよりましだし……。
金曜土曜で泊まったり、土曜日曜で泊まったり。
そして七香ちゃんや和くん達みんなで遊んだり。
そんなことがまるで習慣みたいに―――なってきて。
気づけばもう明日はバレンタインデーで。
今年はバレンタインが休日だから、和くんと捺くんへは月曜日に渡す予定だけど、先生には当日渡すように″命令″されて。
土曜日に泊まりに行って、日曜日にチョコを――もちろん義理も義理のチョコ――渡す予定になってた。

私はいつのまにか―――。

どうしてか。

″当たり前″のように思ってたのかもしれない。

楽しい七香ちゃんたちがいて。
私を好きだけど、無理強いすることなく和くんと捺くんが友達としていてくれることに。

そして――――。
先生といることに―――慣れてしまってたのかもしれない。


でも、そんな生活は一瞬で終わりを告げた。

ううん………。

私が壊してしまった。

全部、全部―――。

悪いのは。



残酷なのは―――私、だった。


そしてそれに気づけなかった私は冷酷なんだろうと、思う。