secret 75 Unconsciously

先生がネックレスに触れてる。
私は急に昼間電話で喋ったゆーにーちゃんの声を思い出して、身体を引こうとした。
でも先生の片手が私の腰を押さえて離れないようにする。
「もしかして、例の元カレから?」
ほんの少しだけ口角を上げた先生がネックレスをいじりながら訊いてくる。
「………」
「″ゆーにーちゃん″?」
「え……?」
なんで、先生が名前知ってるの?
驚いて先生をじっと見ると、
「お前さっき寝ぼけて言ってたから」
……あ。
そう、だ。
それも確か私―――先生をゆーにーちゃんと間違えた、気がする。
ぎゅっと胸が苦しくなるのを感じた。
「まだ脈あるんじゃないのか」
「………は?」
「こんなプレゼントするくらいなら、まだお前に気があるんじゃないかって言ってるんだよ」
「………」
ゆーにーちゃんは……まだ、私のこと好きでいてくれてる?
姪としてじゃなくって?
「………っ……や」
先生の言葉にぼうっとしてたら、不意に胸の蕾がぎゅっと摘ままれた。
冷えたのは私の頭だけだったみたいで、身体はまだ熱を帯びててぴくんて震えてしまう。
「……せんせ…。待って……」
「途中で止められないからなって、最初に言っておいたぞ?」
先生は言いながら私の首筋に顔を埋める。
舌が這ってきて、身体が痺れる。
でも―――、頭の中はごちゃごちゃしてきて、先生の胸に手を押し当てて少しでも離れようとしてみた。
「……なんだよ」
「あ、の……」
なんて言っていいのかわかんなくって視線を揺らしてると、先生が軽くため息をついた。
「いまさら、だろ? お前と俺は”セフレ”。セックスなんてゲームで、気持ちよくなりゃいいだけのもの」
だから―――、と先生は舌を私の胸まで這わせていって上目に私を見る。
「いちいち気にしなくってもいいだろ? それに”元カレ”ってことは今は”無関係”ってことだろう?」
無関係……、じゃ、ない。
でも、そんなこと言えない。
いっそ、関係なんてなくなってしまえばいいけど。
私とゆーにーちゃんはずっと、ずっと姪と叔父であり続ける、から。
だから、先生の言うとおりいまさらなのに。
なんで、いまさら、なのに。
違う、いまさらだけど。
ゆーにーちゃんと、私は、叔父と姪で。
先生と、私は、セフレで。
そう、なんだけど。
なんだろう………、すごく、自分がいま何を考えて、なにを考えようとしてるのかわからなくなってくる。
胸の奥が鉛でも押し込められたみたいに重くって、変に息苦しい。
「―――先生」
「……なんだ」
「私、ゆーにーちゃんっていう人のことが、ずっと好きなんです」
「……ああ」
ゆーにーちゃんのことを考えると、苦しくって、会いたくってたまらなくなる。
だから、いまゆーにーちゃんのことを考えて、苦しい。
頭が、痛い。
「せんせ……」
「なんだよ」
先生は言って、ため息をついた。
「……仕方ないな……、今日は特別にやめ―――……」
離れていこうとした先生の身体に、ぎゅっと抱きついた。
頭が、ものすごく痛い。
胸も、どうしようもなく苦しくって、息がとまりそうな気さえする。
「先生……は、私のこと好きじゃないですよね……?」
「……あ? ……ああ」
「ただの、セフレ、ですよね」
「……ああ」
「セックスはゲームなんですよね」
「……ああ」
「なら……、ゲームの続き……したいです」
「………」
なに、言ってるんだろう、私―――。
頭がぐらぐらして、でも目の前にある温もりが離せなくって、先生の胸元に顔をうずめてた。
「………おい」
少しだけ沈黙が流れて、先生の低い声が聞こえてきた。
恐る恐る顔を上げる。
そして目が合った。
先生の欲に濡れた眼が見えたのはほんとに一瞬で、次の瞬間には唇を塞がれてた。
熱い舌が、口内を荒らして―――私はあっという間に快感の波にのまれていった。