secret 6 隣の席は金髪少年

「ユタカくんて呼んだほうがいい? 和くんがいいかな?」
金髪でヤンチャ少年らしいけど、七香ちゃんが仲良くしてるってことは悪い人じゃないんだろうな。
とりあえずなんて呼べばいいのかなって思って聞いてみたんだけど、なんでかユタカくんと七香ちゃんは驚いたような顔してる。
「……どっちでも」
少ししてぼそりとユタカくんが言った。
「そっかあ、じゃあ……和くんて呼んでいい? 下の名前で呼んだほうが仲良くなれそうな気がするし!」
「「………」」
また二人が黙り込んでる。
なんか変なこと言ったかな?
少し気になったけど、それより気になったことがあったから私は和くんに声をかけた。
「和くんの金髪すごいキレイだね。自然な感じだし。美容室でしたの?」
「「……」」
和くんがポカンとして、そして七香ちゃんが突然吹き出した。
「あはは! 実優ちゃんて意外に怖いもの知らずなんだね〜。ユタカに初対面でこんなに喋れる女の子初めて見たわ!」
「えっ。……もしかして私馴れ馴れしかったかな?」
心配になって焦ってしまう。
だけど七香ちゃんは「違う違う〜」って手を振った。
「ほらコイツって見た目ヤンキーでしょ? だからさ敬遠されがちっていうか。ま、顔はいいからモテはするんだけどね〜」
そっか。和くんはモテルのかぁ。もてそうだな、確かに
「ふーん。そうなんだね。でも七香ちゃんが仲良くしてるってことはいい人ってことだよね」
そう言うと、七香ちゃんはまた吹き出した。
和くんは素知らぬ顔で右手で頬杖ついている。
「まー確かにいい人かもね。素行は悪いけど〜」
ニヤニヤと七香ちゃんが意地悪そうに笑ってる。
……七香ちゃんのほうが怖いもの知らずなんじゃないかな。
だって和くんにらんでるよ!
にらまれたら……ちょっと怖いかもしれない。
さすがヤンキー!
「とりあえず仲良くしてやってよ! ユタカも! 実優ちゃん可愛いからっていじめちゃだめよ!」
いや可愛くはないんだけど……。
「ウルサイ」
うんざりしたように和くんがため息をついた。
それから三人で、って言っても和くんは聞いてるのかどうかわかんない様子だったけど、喋ってたらチャイムが鳴った。
次の授業は英語。
先生がやってきて授業がはじまる。
はじまってすこししてトンと机の端っこが小突かれた。
見ると、和くんがこちらを見てた。
『なに?』
ほぼ口パクで言うと、和くんは自分の髪をつまんで見せる。
『びようしつ』
ゆっくり和くんが口を動かした。
―――美容室。
一瞬なんのことかわからなかったけど、すぐにさっき私が聞いた質問への答えだってことに気付いた。
ちゃんと覚えてて、答えてくれたのが嬉しくって笑顔になる。
私はノートの端っこに、
『ありがとう! 今度髪染めに行きたいと思ってて、和くんの行ってる美容室教えて?』
って書いて見せた。
和くんはそれを読んでふっと笑うと、小さく頷いてくれた。
『あとでな』
サラッと書き加えられた和くんからの返事。
うん、と頷いて、私は新しくできた友達が嬉しくって、ルンルン気分で苦手な英語の授業を受けた。