secret 49 クリスマスパーティ・イブの夜

ゆーにーちゃんからもらったネックレスをつけて、5時ごろ家を出た。
白のコートはお正月におろそうかなって思ってクローゼットにしまった。
クリスマスパーティは7時から。
七香ちゃんと6時半に待ち合わせして一緒に行く約束をしてる。
まだちょっと早いけど、七香ちゃん、そして和くんと捺くんになにかクリスマスプレゼントを買おうかなって思って早めに出てきた。
雑貨屋さんに行って、七香ちゃんにはスイーツのチャームとラインストーンがついてる可愛いストラップ。
和くんにはピアス、捺くんにはキーチェーンを買った。
大したものじゃないけど、気に入ってくれるといいな。
「実優、お待たせ」
「七香ちゃん!」
待ち合わせ時間になって、七香ちゃんと合流した。
2人で寄り道しながらパーティ会場のバーに到着。
バーってはじめてだから、ちょっと緊張。
七香ちゃんも初めてらしいけど、知ってる人たちしかいないから平気だよって笑ってた。
確かにそうだよね。
七香ちゃんのおかげでほっとしながら、重い扉を押して中に入った。
中はちょっと薄暗くて。でも、もう騒がしかった。
誰が誰だかぱっと見ただけじゃわかんないけど、みんな楽しそうに騒いでる。
「実優ちゃん!」
駆け寄ってきたのは捺くん。
その後ろには和くんもいて、軽く手を振ってくれる。
「適当にみんな始めてるんだ。ま、パーティつたって、食って飲んでするだけだしさ」
にこっと笑って、捺くんがカウンターに案内してくれた。
「こんにちわ」
カウンターの中にいた20歳半ばくらいの男の人が笑いかけてきた。
「俺の従兄のマサ兄。マサ兄、実優ちゃんと七香ちゃん」
カウンターの席に、和くん、私、捺くん、七香ちゃんの並びで座る。
そして捺くんが紹介してくれた。
「ああ。君が実優ちゃんね。なるほどー捺がいうとおりカワイイねー」
ちょっと不精ひげがワイルドなマサ兄さん。
……ていうか、捺くんが言うとおりって……。
わ、私のこと話してるのかな?
はずかしー。
「マサ兄! 実優ちゃんにちょっかい出すなよ」
「はいはーい」
軽い調子で捺くんをあしらうマサ兄さん。
その表情が捺くんを可愛がっている様子がよくあらわれてて、微笑ましくてちょっと笑っちゃった。
「飲み物なんにする?」
「私、カンパリソーダ」
捺くんが訊いて、七香ちゃんが答えた。
私の横の和くんはちょっと透明な飲み物を飲んでる。
「和くん、何飲んでるの?」
「ジントニック」
「…………」
「実優ちゃんは?」
か、カンパリソーダにジントニック?
それって……。
「……あの、もしかしてみんなお酒飲んでるの?」
「うん」
「飲むよ」
「ああ」
捺くん、七香ちゃん、和くんが同時に言った。
「え、ええ? 私たち高校生だよ。未成年だよ!?」
思わず大きな声で言うと、マサ兄さんが吹き出した。
「実優ちゃんの言うとおりだよ。お前ら未成年、調子のんなよ?」
マサ兄さんが意地悪く言うと、
「いいのいいの! 今日はイブだから」
「そうそう。今日くらいはパーっとね!」
捺くんが悪びれもなく笑って、七香ちゃんまでもが「平気平気」って言ってる。
和くんはジントニックを飲みながら、
「実優は飲まなくっていい」
って、言った。
心配してくれてる感じがして、嬉しくって微笑む。
「えー。飲もうよ! せっかくだし!」
捺くんが顔を覗きこんできて、頬を膨らませた。
……捺くん、絶対わざとでしょ?
そんな可愛い拗ねかたして!
「うーん。でも……」
「ファジーネーブルとかオレンジジュースっぽいし、飲みやすいよ」
「……うーん」
「一杯だけでも飲もうよ!」
「……でも」
「マサ兄! 実優ちゃんにはファジーネーブルね!」
って、無理やり注文されちゃった。
私、お酒飲んだことないんだよね。
大丈夫かなぁ?
それから少ししてマサ兄さんが私の前に細身のグラスを置いてくれた。
見た目もオレンジジュースっぽいなぁ。
「実優、無理するなよ?」
和くんが心配そうに見つめてくる。
「う、うん。とりあえず……いただきます」
せっかく作ってもらったのに飲まないのも悪いし、ドキドキしながら飲んでみた。
「……どう?」
捺くんが首を傾げるようにして訊く。
「………美味しい」
ほんとにオレンジジュースみたいだった。
ちょっと苦みがあるような気がするけど、ぜんぜん平気。
「ジュースみたい」
「大丈夫でしょ?」
にこにこ捺くんが安心したように笑う。
「うん!」
ほんと、美味しい!
七香ちゃんもカンパリソーダっていうのをごくごく飲んでた。
みんなよく飲むんだなぁ。
「あんまりペース上げんなよ。飲みやすくっても酒だからな」
ぽん、って和くんが私の頭に手を乗せて笑う。
「……ありがとう、和くん」
和くんの気遣いが嬉しくって微笑み返すと、頭の上でパチンって音が鳴った。