secret 20 金曜日はパラダイス!?

「和くん、今日も来なかったね」
学校の帰り道。
私は隣を歩く捺くんに話しかけた。
お昼休みは毎日、そして放課後は一緒に帰ろうと私のいるクラスに来る捺くん。
「あー、でも和はよくサボってるしね。あんまり気にしなくてもいいんじゃないかな?」
「……うん」
先週だって実際和くんは週半分はサボってた。
だから気にすることなんてないのかも。
……でも今週はちゃんと来てたのに。
和くんが来ないのは水曜日の……あのことがあったからじゃないかって思ってしまう。
何回かメールしてみたけど、返事はなかったし……。
やっぱり私嫌われちゃったのかな。
「……あった?」
ぼうっとしてて捺くんに話しかけられたことに気づかなかった。
「へ?」
「……和と、なんかあった?」
それは昨日も聞かれたこと。
水曜日、和くんを追いかけていって、そのあと早退しちゃったから捺くんはひどく気にしてる。
実際ナニかあったわけだけど…言えるはずないし。
ただ首を横に振ることしかできない。
「なにもないよ! 友達だし、心配なだけ」
笑って言うと、捺くんは「…友達としてなら別にいいけど」って、ちょっと拗ねたように口を尖らせた。
「実優ちゃん、オレが実優ちゃんのこと好きってちゃんとわかってる?」
「う、うん」
だって毎日最低一回は『好き』って言ってくるしね。
「ほんとに? あのね、オレ実優ちゃんと今は友達してるけど別に友達になりたいわけじゃないからね」
「…う、うん」
「友達だけど、友達ってだけじゃなくって……実優ちゃんを好きな男として見て意識して欲しいんだ!」
「う、うん」
「……ずっとおんなじ返事なんだけど……」
「う、うん……、あ! あのその、わかりました」
またおんなじ返事をしかけて、あわてて言い直した。
捺くんがじとっとした眼差しを向けてきて、ちょっとイタイ。
だって告白された経験なんて今までないんだもん。
そんな風に言われるとどう接していいのかわかんなくなる。
「まあ、実優ちゃんの天然は今に始まったことじゃないし、そこが可愛いんだけど」
ふっと捺くんは笑顔を浮かべた。
……か、可愛い!
キミのほうが可愛いんだけど!だよ〜!
捺くんの美少女…じゃない、美少年ぶりに思わず見ほれちゃう。
「じゃあオレ、実優ちゃんに意識してもらえるように頑張るから! 頑張っていい?」
勢いよく、でも最後は上目遣いで訊いてくる捺くん。
……捺くん、その上目遣い…ワザとでしょ!?
だって可愛すぎて頷くことしか出来ないもん。
バカみたいにカクカク首を振る私に、捺くんは「やった!」って顔を輝かせる。
その素直さに、思わず頬を緩めてると、捺くんが私の手を握ってきた。
「え?」
「手、繋いで帰ろう! 頑張っていいって言ったよね?」
「う……ん」
「だからこれからはメンタルだけじゃなくって、ガンガン攻めてくね! こっちのほうも!」
そう言って繋いだ手を見せてくる。
こっち……って……、手を繋いで帰るってことかな?
……捺くんって……か、可愛い!
私にとってはやっぱりお友達だけど、こんな可愛い攻めを宣言してくる捺くんににやけちゃう。
「意味わかってる? 実優ちゃん」
クスッと笑った捺くんの顔が……小悪魔っぽい。
は?
きょとんとしてると、繋いだ手を握りしめられて、そして捺くんの顔が素早く目前まで迫ってきてた。
チュッ。
小さなリップ音を立てて離れていく捺くん。
……ぇ? いま…?
「エェェ?」
「ふふっ。実優ちゃん、顔真っ赤。覚悟しててね? こっちってのはカラダのことだからね」

……………。

「エェェェェ!!!?」
私は思わず、絶叫してしまったのだった……。