secret 150  最終章/Eternally  

「け……結婚……って」
「お前が松原実優になる」
やっぱり当たり前のことのように言って―――先生は私の指に光るダイヤに、キスを落とした。
わざとらしく、芝居がかった動作で、艶やかな笑みを浮かべて。
私はただ呆然とそれを見ることしかできなくて、固まる。
そして先生に言われた言葉の数々を混乱しながら整理していって。
「………け……結婚!!??」
絶叫した。
「そう」
「結婚!? もしかして先生と私が?」
「そうだってさっきから言ってんだろ」
「な、なんで!?」
「………」
思わずそう叫ぶと、それまで笑ってた先生がぴくりと顔をひきつらせた。
「……お前なぁ」
低く明らかにちょっと怒ったっぽい先生の声。
あっと思った次の瞬間、私は押し倒されてた。
先生が馬乗りになって、じっと見つめてくる。
「おい、実優」
「は……はい」
「よーく聞いとけよ」
「へ?」
怖い顔で先生は私の顎を掴む。
そして―――。
「愛してる。ずっと俺の傍にいろ」
「………」
頭が、真っ白になった。
指輪の意味と、言葉の意味を頭が理解するより先に―――涙がこぼれた。
「………っ……でも」
あり得ない。
あり得ないくらい、嬉しい。
だけど……。
「でも、わ、私、まだ17だしっ」
「だから婚約だろ」
「まだ付き合いはじめたばっかりだしっ」
「時間が関係あんのか?」
「せ……先生は……お坊ちゃまだし……」
「それが?」
「……わ、私なんか……私みたいな子供……」
「まー若いけど、お前は俺の女だろ」
「……って……、先生には……もっと」
「もっと?」
「………素敵な……ひと……が」
「お前がその素敵な人とやらになればいい」
「………っ」
「実優」
「……ん……っ」
「お前、ホワイトデーの日のこと、覚えてるか?」
「………」
「お前は俺が欲しいって言ったんだ」
「………」
「だから俺はお前のものだろ?」
「………」
「この俺を堕として―――、途中で逃げられるなんて思うなよ?」
「……っ…」
「それに、俺がお前のものなら」
先生の指が、私の涙を拭って。
先生の唇が、私の唇に優しく触れて。
そして―――やっぱり先生は、俺様な笑みを浮かべて。
「お前は、俺のものだろう?」
甘く、囁く。
「………っ、せんせい」
「まさか、この俺のプロポーズを断るなんて、ないよな?」
「……っ……」
「プロポーズ受けるのと、全縛りのソフトSMどっちがいい?」
ニヤッと、先生は笑う。
私は―――……身体を起こして、先生に抱きついた。
「ぷ、ぷろぽーずがいいっ。ずっと―――そばに、いて?」
涙でぐちゃぐちゃになりながら、先生にしがみつきながら、必死で言った。
ふっと先生が優しく笑う気配がした。
「ああ。前、言ったろ?」
そっと私の顔を上向かせ、先生が目を細めて覗きこむ。
「占い師から100歳を超える長寿になるって言われてるからな。だから―――お前がイヤになるくらい、傍にいてやるよ」
「……っ…」
涙腺は崩壊してしまって。
私はなにも言うことができなくなって、先生の胸に顔をうずめて、泣きじゃくった。
先生はずっとあやすように頭と背中を撫でてくれた。

「先生」
「ん?」
「大好き」
「知ってる」

そして、キスをした。

何度だって、ずっとずっと。

「晄人」
「―――なんだ?」
「愛してる」
「俺も、愛してる」


終わらない、キスを―――あなたと、ずっと―――……。




SECRET GAME ... GAME OVER ...

 but ...

never end.