secret 149  最終章/Eternally  

全部吐き出してしまうまでゆっくりと腰を動かしてた先生。
繋がったまま先生は私を抱きしめて横になるとそっと腰を労わるように撫でてくれた。
「……やっぱり」
ぽつり先生が呟いて、すぐそばにいる先生を見つめる。
「なに?」
「実優のナカは気持ち良すぎるとしみじみ思った」
ニヤっと笑う先生に、火照った顔がさらに熱くなる。
恥ずかしくって顔を背けようとしたけど、先生の手に妨げられて、唇を塞がれた。
ゆっくりと味わうように舌と舌を絡める。
唾液が口の端からこぼれてしまうほど、長くキスをした。
「……実優」
先生が私を抱きしめたまま半身を起してベッドヘッドに寄りかかった。
そして私の左手を握り締めて、薬指にはめられた指輪を撫でる。
「これは星座石だが……、誕生石がなにか知ってるか?」
「誕生石……?」
女の子なのにそういうのに疎くって、ピンとこない。
4月の誕生石ってなんだっけ……?
首を傾げる私に、先生は小さく笑いながら指輪を抜き取った。
「え?」
さっきつけてもらったばかりなのに、なんで?
ぽかんとして見てると、先生はその指輪を私の右手の薬指につけなおした。
「………先生?」
意味が分かんなくって問いかける。
だけど先生は答えずにベッドサイドテーブルへと身を乗り出した。
そして何かを取って、私の左手を持ち上げて―――。
「………え……?」
ひんやりとした感触。
さっきまであった指輪はもう体温と馴染んでたけど、いま新たにつけられたソレは冷たくて。
「お前の誕生石はダイヤモンド。これだ」
先生の言葉に、私はやっぱりぽかんとすることしかできずに―――薬指にある指輪を見つめた。
もしかしてプラチナ? ホワイトゴールドよりも艶っぽく輝いてるリング。そしてその中心には大きな石がついてる。
先生の言うことが本当なら、ダイヤモンド、が。
「……だ、ダイヤ!?」
しばらくしてようやく認識した単語に思わず叫んでしまう。
「ああ、ダイヤ」
「なんで!?」
だってさっき指輪はもらったのに。
「お前の誕生石っていうのもあるが、婚約指輪ならダイヤが常套だろう?」
「……は?」
いま、先生なんて―――?
「あと、これ」
そう言って先生は私の掌になにかを落とした。
それは鍵で……。
「えと、あの?」
「マンションの鍵」
「……先生の?」
「そう」
「……なんで?」
「明日からお前が住むところだから、鍵いるだろう?」
「………」
当然って感じで言う先生。だけどその目は笑っていて。
「……………はぁ!?」
続けて告げられた事実にパニックになる。
住む、ってどこに?
それに、その前に言った婚約……って。
「あ、あの、先生? 意味がわかんないんだけど……、婚約指輪って? 一緒に住むって、あの?」
「そのまんま。お前は明日から俺のマンションで一緒に住む」
「な、なんで!?」
「なんでって、お前の保護者の佐枝さんは海外に言ったわけだろ。一人暮らしなんて危ないから俺がお前の保護者代りだ」
「……ゆ、ゆーにーちゃんは?」
「了承済み。佐枝さんもお前が一人で暮らすのは心配だったみたいだしな」
「………」
確かに……正直一人暮らしは寂しいし……、先生と一緒に住めるなんて嬉しい。
でも。
「……えと……その件はなんとか理解できるけど……。婚約指輪っていうのは……」
キラキラと光ってるダイヤモンド。ショーウィンドウなんかで見たことはあるけど、つけてみるのなんて初めてで。その重さにドキドキが止まらない。
「お前未成年だし、いくら一緒に暮らすといっても30間近の男と女子高生じゃ、なんて噂されるかわからないしな。恋人だからというよりも、″婚約者″として一緒にいれば、問題も少なくなる」
「………」
そっか―――。
そうだよね、いわゆる世間体っていうのだ。うん。
同棲は同棲でも恋人より婚約者のほうが世間的に体面がとれるっていう感じなんだろう。
先生はいいところのお坊ちゃまだし。
変な噂たてられちゃ……だめだから。
だから、きっとフェイクのための指輪なんだ―――。
「籍は別にすぐにいれても俺はいいけど、まぁやっぱり卒業までは待った方がいいだろうし。どっちにしろ佐枝さんが帰国してからしか式は上げられないしな」
「………」
ん?
えっと……。
ん?
「とりあえず近いうち俺の実家に連れてくから」
「………」
んん???
あれ????
「おい、聞いてんのか? なんだその変な顔」
軽く先生が私の眉間にデコぴんした。
「ったぁ」
額を押さえながら、先生をまじまじと見る。
「あ、あの先生」
「なんだ」
「一体何の話してるんですか?」
「何のって、結婚」
当たり前のことのように言って、先生はニヤリと笑った。