secret 142  最終章/Eternally  

次の日、私とゆーにーちゃんはお墓参りに来てた。
パパとママのお墓。一ヶ月ちょっと前、ゆーにーちゃんが帰国したときにもお参りした。
ゆーにーちゃんはまた二年は海外へ行っちゃうから、最後にもう一度っていう話になった。
2月に来たときと違って、肌寒さはあるけど春に向かって暖かい空気もある。
私はそっと手を合わせて目を閉じた。
この前ここへ来たとき、パパとママになんて願っただろう。
私とゆーにーちゃんを見守ってて、って想った。
そして―――ゆーにーちゃん以外の人を好きにならないように、って……祈ったんだ。
パパ、ママ……ごめんね?
いまだってゆーにーちゃんを愛してるって言えるのに、どうしようもなく好きな人ができちゃったよ。
ゆーにーちゃんを裏切ってしまった私を、ママは怒る?
でもね。
ずっとねゆーにーちゃんを大好きな気持ちは変わらないし、ゆーにーちゃんが幸せになるように一番に祈ってるから。
だからね、ママとパパと一緒にゆーにーちゃんを見守ってていい?
ゆーにーちゃんが幸せになりますように、って毎日願うから。
……それと……今度先生連れてくるから、パパとママが気に入ってくれるといいな。
本当に……私なんかにもったいないくらいすごく優しいひとだから。
「………」
パパ、ママ大好き。
最後に心の中で呟いて、顔を上げた。
ゆーにーちゃんはまだ手を合わせてる。
私の問いかけに、返事があるはずないけど。
でもいつだって優しくって私に甘かったパパとママならきっと私のわがままなお願いも聞いてくれるって思う。
きっと、ゆーにーちゃんに幸せを運んでくれるって思う。
「―――」
小さな吐息をついて、ゆーにーちゃんが立ち上がった。
目が合って笑いあう。
ゆーにーちゃんが手を差し出してくれて、手を重ねる。
ちいさいころから、物心ついたころからゆーにーちゃんはいつだって私の手を引いて歩いてくれた。
「ゆーにーちゃん」
笑顔で見上げたら、ゆーにーちゃんも笑顔をくれる。
「うん?」
「お腹空いたね! ランチ行こう!」
「そうだね、なにが食べたい?」
「うーんとね」
あと一週間もしないうちにまた離れてしまうけど、寂しくないように。
今日一日を楽しい思い出でいっぱいになるように過ごせたらいいな。
そう思いながら私からゆーにーちゃんの手を引いて、お墓を後にした。









ランチはパスタを食べて。そのあとはドライブをして、水族館に行った。
大きい水槽を泳ぐ魚の群れやイルカのショー。
水族館には中学生のころゆーにーちゃんと来たことがあったけど、やっぱりすごく楽しかった。
それからカフェでお茶して、ショッピング。
「4月3日に出発だなんて……、あわただしくてごめん」
苦笑しながらゆーにーちゃんが言ったのは何件か目かのお店、雑貨屋さんでだった。
「なんで謝るの? お仕事だからしょうがないよ! それに、3日より早くなくってよかったよ?」
にっこりとゆーにーちゃんを見つめたら、「そうだね」と微笑んでくれる。
そして店内を見渡した。
「好きなものなんでもいいよ」
「うん。大きいぬいぐるみがほしいかも」
「ああ、あのキリンとかは?」
「キリン……。可愛いけど抱き心地悪そう」
「一緒に寝るの?」
「うん!」
「そっか……。でもそれだと松原さんが……」
「え?」
「あ、いや、なんでもないよ。じゃああのクマは? 無難だけど可愛いよ」
「オレンジ色だ! うわ、すっごく肌触りいいよ!」
「ほんとだ。でもこっちの一回り小さいサイズのほうがいいと思うよ」
「そうかな?」
「うん。あんまり大きいときっと松原さんが……」
「へ?」
「え?」
ぬいぐるみを物色する私たち。
たまにゆーにーちゃんがぶつぶつ言ってるんだけど、よくわからないままに話を逸らされちゃう。
「じゃー、これにする!」
ゆーにーちゃんがお勧めしてくれたぬいぐるみにすることにした。
最初私が見たのは私より幅が大きいクマさん。買うことにしたのはそれより小さい、でも抱っこしてねるにはちょうどいいくらいの大きさ。
オレンジ色メインで耳の中とかは黄色で、でもそんな奇抜な色合いじゃなくって可愛らしいクマさん。
そんなクマさんを抱っこしてレジに向かうゆーにーちゃん。
「プレゼントですか?」
「はい、バースディプレゼント用にラッピングしてもらえますか」
レジの人と話してるゆーにーちゃんから、可愛らしい雑貨を見て回る。
いろいろ見てる間にラッピングされたクマを抱えたゆーにーちゃんが戻ってきた。
「お待たせ」
「ううん」
「はい、って渡したいところだけど。土曜までこのクマの身柄は預かっておくよ」
「―――うん」
からかうように目を細めるゆーにーちゃん。
もちろん、って私は頷いた。
ゆーにーちゃんが出発する4月3日。
その日は私の―――17歳の誕生日。