secret 120  大切で、大切な、ひと。  

耳に入ってくるのは卑猥な水音。
くちゅくちゅって、私のナカをかき回す音に、頭の中が蕩けてく。
キスをねだって舌を絡めて。
ナカの一番感じる部分を激しく責められて。
「……っあ! ん……っ、あぁ……っ!!」
ただ快感だけを追う身体はあっというまに昇りつめてしまう。
そして指とは質量が全然違うモノがナカに入り込んでくる。
自分でも腰を揺らしながら、最奥まで突き刺さってくるモノに蜜はどんどん溢れてって。
「っん、っ…は……、ぁん……」
気持ちいい。
って、それだけを感じながら、激しい律動に身を任せる。
また絶頂に達するのはそんなに遠くなくって、閉じた瞼の中でチカチカするのを感じた。
それからしばらくして、奥に熱いものが吐き出されるのを感じて、それにまたイってしまう。
でも―――。
「…っ、んっ……も……っと」
私はもっと、ってねだる。
キスを自分からしかけて、舌を必死で這いまわして、滑らかな肌に手を這わせて。
ナカに埋まったままだったモノがまたゆっくり動きだすのを感じて。
ただただ熱に、溺れる。
そうして何度絶頂を迎えたんだろう。
「あ、っぁ……、っは……ん、ん……っ!!」
気持ちよくって、もうそれだけしか考えられなくなってた。
激しく突きあげらえて身体が大きく揺さぶられて、またイキそうになって。
なのに、その瞬間は唐突に来た。
「っ……あ……っ………ん……?」
もうちょっとで昇りつめそうな寸前で、律動がピタリと止まった。
身体中に燻ぶる快感に悶えながら、動いて、と腰に足を絡める。
だけど、反応はなくって。
少しして、声は響いた。
「……実優」
「……ん……?」
「……実優」
「……な……に?」
「目を、開けて」
「………え…?」
なんだろう、って思いながらも、疼く身体に腰を勝手に揺らしてしまう。
「―――……実優!!」
だけど、いままで聞いたことないような、強く悲痛な叫び声に―――私は閉じたままだった瞼を上げた。
薄暗い部屋の中。
私の上にいるゆーにーちゃんと、目が合う。
「……どう、したの……?」
ゆーにーちゃんの顔が苦渋に歪んでる。
「………ちゃんと、目を開けて、俺を見て」
苦しげに、ゆーにーちゃんが言った。
私は困惑して、快感でうまく働かない頭の中で、その意味を考える。
「……見てる……よ?」
そう言うと、ゆーにーちゃんは眉を寄せ私を抱き起こした。
体面になって、いっそう奥深くに入ってしまう感触に身震いする。
「……ゆーにーちゃん……?」
どうしたのか、もう動かないのか、って私がただ見つめてると、ゆーにーちゃんは私の頬にそっと手を置いた。
「………ずっと、目を閉じてた」
「………そう…かな……?」
そんなこと意識してなかったから、わからない。
「……実優」
「……う……ん?」
私を真っ直ぐ見つめるゆーにーちゃんの目が、あまりにも哀しみに満ちてて。
血が冷えていくような感覚を覚えた。
「……目を閉じて―――誰を想ってた?」
「―――………え……」
声が、身体が、震えた。
「……目を閉じて、誰に抱かれてる気になってた?」
呆然と、ゆーにーちゃんを見つめる。
ゆーにーちゃんはただ辛そうに顔を歪ませてた。
「実優……俺は」
呟きながら、ゆーにーちゃんがまた私の身体をぎゅっと抱きしめて、耳元で囁いた。
「俺は―――先生じゃないよ」
そして止まっていた動きが、再開される。
休んでたぶんを取り返すように、激しく突きあげられる。
腰を打ちつける、肌がぶつかる音が響く。
ぐちゅぐちゅと蜜と、前に出された白濁液が混じり合って溢れていってるのがわかる。
突き上げられながら、突起を擦りつけられた。
「……っあ、んっ、ぁあっ……!」
イク寸前だった私の身体は、その激しさに呆気なく昇りつめてく。
いままでで一番の大きな快感の波。
「あ、っは……っ!! あぁ……っ!!!」
目の前がスパークして、身体が弓なりにのけぞる。
ぎゅっと収縮するナカに、2度目の欲の証が吐き出される。
全部一滴残らず出すように、動き続ける腰に、私はイキ続けて。
頭の中が真っ白になるのを感じた。
―――だけど。
なにかが崩れていく音が、絶頂の中で、哀しく響いてた。