secret 12 お昼休みは波乱万丈!?

「おはよー! 実優ちゃん」
愛くるしいっていう言葉がぴったりな笑顔で捺くんがやってきた。
いまはお昼休み。
捺くんは同じ学校で、隣のクラスだった。
「おはよう。捺くん」
告白されたのが土曜日。
あの時、捺くんは『今日出会ったばっかりだし、返事はまだいいから。友達からスタートして、オレのこと好きになったら教えて』って、すごいことを言ったのだ。
それから月曜日学校が始まって、今日は水曜日。
捺くんはお昼休みに毎日来て一緒にご飯を食べるようになった。
隣の席の和くんも一緒に。
っていっても和くんは自分の席で食べてるだけで会話には入ってこないんだけど。
それに最近ずっと機嫌が悪い。
捺くんはその理由を知っているみたいだけど、教えてくれないし、二人はあんまり喋ってないみたい。
ケンカでもしたのかな……?
「実優ちゃん、今度映画でも行かない?」
ぼーっと和くんのことを考えていたら捺くんが顔を覗き込んできた。
近い距離にびっくりして少し身を引く。
「え、映画?」
「私も行きたい」
七香ちゃんが何故かニヤニヤしながら言う。
「七香は来なくていいの! デートなんだから」
しっしっとまるで追い払うみたいに手を振る捺くん。
「あはは。ジョーダンよ。邪魔ものにはなりたくないもーん」
じょ、冗談なの!?
私は三人でいいんだけど……。
告白された状態で2人でお出かけとか……なんか緊張しちゃいそうだし。
「ねぇねぇ、実優ちゃん。映画どう? 遊園地とかでもいいし、どこでもいいよ♪ とりあえずデートしようよ!」
ぐいぐいと捺くんが迫ってくる。
積極的だなぁ、なんて人ごとみたいに思ってると。
ガタン、と大きい音がした。
それは和くんで机の脚を蹴ったみたいだった。
「………和。実優ちゃんがビビってるだろ。急に蹴るなよ」
捺くんが眉を寄せて和くんをにらむ。
たしかにびっくりして、ちょっと怖かった。
「あーあ」と、七香ちゃんは苦笑してる。
和くんは一瞬だけ私を見ると、勢いよく立ちあがって教室を出て行った。
「しょうがねーヤツ」
ため息混じりに捺くんが呟いてる。
「あんたもちょっとは遠慮すればいいのに。幼馴染でしょ?」
「なんで遠慮する必要あんの? 和だって積極的になればいいだけだろ」
「ユタカができるわけないじゃん。女の子の扱いなんて慣れてないだろうしー」
捺くんと七香ちゃんが喋ってる……のは、和くんのこと。
でも私にはよくわからない内容。
私は和くんのことが気になった。
ほっといていいのかな?
「あの、ちょっと行ってくるね」
心配になって立ち上がると、捺くんが複雑そうに、七香ちゃんが笑いながら手を振った。
「行ってらっしゃい」
どこへかは2人とも聞かない。
言わなくってもわかっているみたいだった。
それから私は和くんを探しに行った。
どこに行ったのかもわかんないのに。
でも会ったのは和くんじゃなくって―――。

「橘」

………松原先生でした。