Dark Moment 6

それから実優が落ち着くのを待って、この前準備室でのことを話した。
あの時の俺の気持ち。
言い訳にしかなんねーってわかってたけど、ぽつりぽつり喋っていった俺に実優はやっぱり実優だった。
天然というか、なんか変わってる。
俺のことなんか嫌って当然なのに、ののしって当然なのに―――逆に実優が謝るし。
俺を慰めようとしたのか罪悪感を減らしてくれようとしたのか「気持ちいいことは嫌いじゃない」とか言うし。
不思議なやつっていうか、天然。
思わず力が抜けて「好きだ」って伝えてしまったら、
「嫌われてるって思ったから」
なんて、言うし。
嫌いなやつをわざわざ襲わねーっての。
ほんっとにこいつは鈍感だし、ほんとに―――可愛い。
でも俺がこいつにとって恋愛対象外だってことはわかってる。
"元カレ"が忘れられないらしい。
松原とヤってたのは……寂しさからなんだろうか?
さすがにそこまでは突っ込んで訊けなかったけど、恋愛感情がないのなら松原なんてやめて、俺の傍にいればいいのに。
元カレがわすれられなくてもいいから。
なんて、女々しいことを考えてしまってた。
いま俺の腕の中にいる実優。
警戒心がなさすぎなのが気になるけど、俺にとってはラッキーで。
でも触れた瞬間、実優の身体が強張って―――自業自得だけどショックだった。
それは寒さのせいだって弁解してきたけど、実際二回も無理強いしたのは事実。
これからさき、許されるならちゃんと実優に気持ちを伝えていきたいって思うけど、もし……二度と触れることができないなら、どうしても俺に対する恐怖心を拭いたかった。
気づいたら「挽回させてほしい」なんて馬鹿なことを口走っていた。
実優は困ったように目を泳がせてたけど、俺に押し切られるようにしてだけど受け入れてくれた。
次、ともだちじゃなくって、実優が好きな男としての俺になって触れれたらいいのに。
顔を真っ赤にさせて俺の腕の中で快感を堪える実優に触れながらそう思った。
指で実優の温かさと締め付けを味わって、イかせてから実優をマンションまで送った。
明日は学校に来る?、と訊く実優に頷くと
「また一緒にお昼食べようね」
そう笑ってくれて、それがすごく嬉しかった。
最低な俺を許して笑いかけてくれる実優を、諦めることなんてできない。
だから、別れ際、触れるだけのキスを落とした。
「明日からともだち、で。でも……ともだち以上になりたいから。またいつかキスさせて?」
めちゃくちゃ恥ずかしかったけど、俺なりの宣戦布告。
トマトのように真っ赤になった実優を残して、そこから離れていった。




その後、俺のことを心配していた捺と合流して―――、一発ぶん殴られた。
「実優ちゃんに心配かけんな、バ和!!!」
滅多に喧嘩なんかしねーくせに、捺はわりと強い。
「悪かったな」
殴られた頬をさすりながら、切れた口の中から血を吐き捨てる。
捺は大げさなくらい大きいため息をついて地面に座り込んでる俺を足蹴にしやがった。
「反省してんなら、ちゃんと明日から学校来いよ! バ和!」
「ああ。わかった。バカ捺」
悪かった、って笑うと捺はまたデカイため息をついて俺を引っ張り立たせた。
「っとに、バ和は」
ぶつぶつ言う捺と肩を並べて、家に帰った。
その日はなぜか俺んちに泊った捺と一晩中くだんねー話してゲームして、次の日は二人揃って遅刻して学校に行った。