Dark Moment 7

「先生!」
「なんだよ」
「あー! もうっ! 持ってて言ったのになんでしてるの!?」
「お前が渡すからだろうが」
うんざり気味な松原と、頬を膨らませて必死そうな実優。
パッと見、微笑ましいカップルの様子。
だけど正直、ウザイ。
「先生のバカー!!」
「知るか」
花火を勝手にしたしないで騒いでる二人。
ほんとーに、幸せそうで目に痛いったらありゃしねー。
花火なんてまだたくさんあるんだから、実優もほかのすればいいのに。
いちゃいちゃしてるとしか見えねー二人。
結局、実優は松原とくっついた。
そうなるまでにはいろんなことがあって、実優もすげー苦しんでた。
なんにもしてやれない俺は見守ることしかできなかったけど、いまこうして実優が松原の傍に入れるのを見れて―――よかったなって思う。
そりゃ本音を言えば、俺が横にいたかったけど。
「ねー、そこのバカップルさん。邪魔」
七香がぎゃあぎゃあ騒いで花火をしている二人を押しのけるようにして打ち上げ花火を設置して火をつけてる。
松原はぐいっと実優を引っ張って危なくない位置まで後退してた。
ひゅー……っと、音だけは本格的な打ち上げ花火があがる。
夜空にパンっと弾けた花火はかなりしょぼいけど綺麗だった。
「先生、次これしたい!」
「はぁ? 線香花火はラストだろ」
「そんな決まりあるの?」
「常識だろ」
「えー」
――――ほんと、イチャイチャしてんなよな、チキショー。
俺だけじゃなく捺もうんざり気味に二人を眺めてて、ちょうど目があった。
ぱくぱくと口を動かす捺。
『バカップル、ウザイ』
思わず笑って頷いて、新しい花火に火をつけた。


俺の想いが伝わることはなかったけど。
これからずっと友達として困った時には味方になってやりたい。
幸せそうに笑う姿を見るのが、一番嬉しいから。
ただ……、いつか俺にもできるだろう俺の手で幸せにする子に出会うまでは、もう少しだけ―――……想っててもいいかな。


視界の中に映る実優の笑顔と線香花火を見ながら、そう思った。


***END.