Dark Moment 5

その日も学校に行かずに家でダラダラ過ごして、繁華街に繰り出してた。
毎日毎日あてもなくぶらついて、喧嘩しての繰り返し。
くだらねーってわかってても止められなかった。
実優を考えないように喧嘩しているうちにだんだん訳が分からなくなっていく。
痛む拳に、飛んできた返り血に、どんどん心が冷えていくのがわかった。
他愛のない理由で男たちに絡まれて、黙っていたら殴りかかってきやがったから一発殴って。
頭の端ではいい加減うんざりしているのにここ数日ずっと喧嘩していたせいで簡単にスイッチは入って血がざわめきだす。
殴られると余計に血が騒いで、殴り返すとまた―――。
アドレナリンってやつなのか。どんどん興奮状態になっていってるのを感じながら数発殴って殴られてをしていたら、運がいいのか悪いのか『警察を呼ぶぞ』とどっかの店のオヤジが止めに入ってきた。
しかたなくバラけて、俺は路地裏に逃げ込んだ。
中途半端に止められてイライラしてるときに―――呼びかけられた。
「和くん!!」
こんな場所で聞くはずなんてない声。
でも聞き間違うはずない声は、実優の声だ。
近づいてくる足音に振りかえると、制服を来た実優が俺のそばにきた。
「……なんで」
どうしてここにいるんだ?
「見かけて……。もしかして和くんかなって思って追いかけてきたの」
そう言って実優は笑う。
なんで。
なんで、俺に笑いかけるんだよ。
笑顔の実優は「あっ、そうだ!」ってなにか気づいたみたいに、ハンカチを取り出した。それを俺に差し出す。
たぶん擦り傷とかを心配して……なんだろうけど、なんで。
どうしてなんだよ。
頭ん中が混乱しまくってる。
だって、俺は―――実優を無理やり……。
だから、実優から俺に近づいてくるなんてそんなことありえねー。
「なんで追いかけてくるんだよ」
驚きと混乱が、だんだんもとのイライラに混じっていくような気がした。
どうして追いかけてきた。
追いかけてくる必要なんて、ないだろ。
「し…心配だったからだよ?」
心配?
なにが。
「学校にもぜんぜん来ないし」
こいつの言ってる意味が全然わかんねー。
なんで、心配するんだよ。
無理やりヤった男のこと―――……。
「ずっと、心配で―――」
……俺とのことなんて、気にするほどのことでもなかった、とか……?
松原とヤってんだから、いまさら俺が入ったところで変わんねー……とか?
イライラ、ざわざわ。
入ったままのスイッチのせいか、喧嘩の名残なのか、疼くように身体中の血がざわつくのを感じた。
前とかわらない笑顔を浮かべている実優。
でも俺の、どす黒くなっていってる心と視界の中では、あの準備室での実優がだぶって見える。
俺の下で喘いでた姿が……。
「ああ、そういうことか」
気づいたら俺は―――実優をコンクリの壁に力任せに押し付けていた。
小さな悲鳴を上げた実優は痛そうに俺を見上げた。
「和……くん?」
困惑した顔が、やっぱりあの時の表情とだぶって、フラッシュバックする。
ぞく、ぞくっと喧嘩の最中に感じる高揚感と、冷え切っていく心の奥。
「あんなことされて、追いかけてくるってことは。また襲ってほしいってことなんだろ?」
驚く実優を見ながら、近づいたお前が悪い、そう思った。
嫌いだ、顔も見たくない、近づくな。
罵倒を浴びせればいいのに、笑顔なんて向けてくるから―――。
「……んっ」
耳に入ってくる戸惑った苦しげな声。
唇に伝わる熱。
また俺は、無理やりキスしてた。
「っ、んん」
実優の身体が強張ったのを感じながら、口の中に舌をねじ込む。
奥に引っ込んでた舌を引きずりだすように無理やり絡めて、吸ってなぶった。
二度目のキスは血の味がした。
この前は躊躇いながら、結局嫉妬に負けて犯してしまった実優を、いままた今度は躊躇いなく犯そうとしてる。
「犯されたのに、さんざん喘いでたもんな?」
唇を離して荒い息をついている実優の目を見つめ、あの時のことを思い出させるようにわざと言った。
潤んだ目が俺を誘っているように見えてしまう。
「そんなよかった? そんなに犯されたいのか」
血がざわざわ騒いでる。
理性は彼方にやられて、いまはただ実優の中に埋まりたい欲求ばかりが昂ぶってる。
「ちが……」
「違わないだろーが」
涙を浮かべて小さく首を振る実優の言葉を遮りながら、実優の太腿に触れた。
ざらっとした感触に鳥肌が立っているのに気づくけど、そのままスカートをめくりあげて、下着の中に手を侵入させた。
そこがどういう状態になってるか確認なんてしないうちに指を突っ込んだ。
「…い…たっ」
「今日はあんまり濡れてないな?」
まったく濡れてなかった膣に、乱暴に指を進めた。
強張ったままの身体。
熱いけど乾いたソコ。
「か、ずくん…っ。やめ……っ」
全部に拒絶されてるって、当たり前なのに苛立って、また実優の唇を塞いだ。
荒く激しく咥内を犯す。
下の口に突っ込んだ指を動かしながらクリトリスに親指を添えて擦りあげた。
ぐりぐりと摩擦してやるとだんだん反応してくるのがわかる。
クチュ、と水音が上からも下からも響いた。
「やっぱり濡れてきたな」
少しづつ指の出し入れがしやすくなってきて、蜜をさらに出すためにこの前実優が一番感じていた場所を探って責め立てた。
熱く俺の指に絡みつく膣内の蠢きに、ぞくぞくする。
「かずくん……、やめて……」
涙声の実優が抵抗するのを押さえつけて、指を増やして快感を送り込む。
ぐちゅぐちゅ水音が路地裏のすえた匂いの中に響いてる。
「っあ……、おねが…いっ、やめ……てっ、和くんっ」
いやだ、と叫ぶ実優に―――イラつく。
「うるさい。黙ってろ」
イライラ、イライラして膣から指を抜くと硬くなった俺のを取り出した。
片手で実優の片脚を持ち上げて、猛った肉棒を潤ったソコに擦りつける。
「やっ!!」
びくり、実優の身体が揺れるのを強く押さえつけた。
聞こえてくる嗚咽に、イライラする。
苛立ちを抑えるためには早く実優のナカに入れちまわないといけない気がして、先端をぐちゅっと押し付けた。
「や、だっ! 和くんっ………、やだよ……っ」
実優の身体が震えて、声も震えてる。
ぽたぽたと落ちてくる涙が俺の手にも降ってきて、イライラして。
――――。
「…………泣くなよ」
実優の涙でぬれた頬に触れた。
「ごめん」
イライラ、イライラしてたのは―――、実優じゃなくって俺自身にだった。
泣かせることしかできない俺にイラついた。
欲に任せて、あの時の実優の感触をまた味わいたくて。
自分のことしか考えてない腐った自分に、どうしようもなくイラついた。
「悪かった」
ぼろぼろと涙をこぼす実優は怯えた目で俺を見てて。
自業自得なのに哀しくて、その涙を何度も拭った。
「ごめん」
謝ったって許してもらえることじゃねーけど。
「ごめん」
罵倒されたって嫌われたってしょうがねーけど。
「………ごめん、実優」
それでも、実優に拒絶されるのが死ぬほどツライ。
泣きじゃくる実優を躊躇いながら抱きしめて、背中を撫でた。
本当なら離れなきゃなんねーんだろうけど、泣かせたままにはできなかった。
でもたぶん、結局は涙も全部、そばで感じたかったからかもしれない。
結局俺は、どこまでも自分勝手だった。