EXTRA GAME / Fragment 4

「……っ…ぁ、そ、ろそろ…って! まだシ終わって20分も経ってませんよ!」
快感に飲まれそうになっていたくせに、実優は俺の手を振り払い勢いよく起きあがった。
焦っている様子を見るとさらに焦らせたくなる。
もう少し休憩させてやってもいいが―――このままじゃつまらねーな。
「わかったよ。もうちょい待ってやるから。ただ、とりあえず」
わざとらしくため息をついてから、笑顔を向けてやる。
「ほら、バンザーイ」
両手を上げろと、指示を出す。
「は?」
「バンザイ、だよ」
意味がわからない、そんな表情の実優ににらみをきかせるとようやく両手を上げた。
すかさずTシャツの裾に手をかけて一気に脱がせる。
「……ッ! キャ〜!! な、なにするんですか!!」
なにって脱がせただけだろうが。
必死で奪い返そうとするからTシャツを放り投げ、ソファーに押し倒し馬乗りになった。
胸を隠す実優の手を両手で押さえつける。
ショーツだけの身体。学校ではさすがに全部脱がせたことがないから、こうしてその肌をすべてみるのは今が初めてだ。
「いつもヤるとき服のままだろ? だから見たかっただけ」
白い肌は若さに溢れていて、見た目通り華奢だが胸は意外に発育がいい。
「胸、D?」
俺の問いかけに答えもせずに実優は恥ずかしいせいか身をよじっている。
どんどん赤くなっていく肌。顔は言うまでもなく真っ赤。
その反応に薄く笑いながら胸を揉んでいて―――ふと目に留まった。
「………実優」
右の胸の内側のほうに内出血のような痣。
それはどう考えてもキスマークだ。
「お前、水曜日以降で誰かとヤっただろ」
キスマークなんてもの俺がつけるはずがない。つける意味もわからん。
せっかくの綺麗な肌に染みついたような痣に不快感が沸く。
「えっ!?」
一瞬驚いた表情をした実優はすぐに視線を泳がせる。
その様子に内心ため息が漏れる。
彼氏はいないと言っていた気がするが、違ったのか?
性格から考えて彼氏がいて、ほかの男とセックスするようなタイプには見えないが……。
かといってセフレが他にもいるようにも思えない。
「キスマークついてるぞ。俺はキスマークつけない主義なんでな」
キスマークに触れ、そして舐めた。
本人さえ気づくかどうかわからないような位置につけられたそれ。見える場所じゃなく、気づきにくい場所だからこそ逆に挑戦的な、嫌なものを感じるのは気のせいか。
「お前、そんなに溜まってたのか?」
彼氏かセフレか―――。
この俺を捕まえておいて、他の男とヤるなんざどういう性欲だ。
そんな余裕あるならさっきの一回戦抜かずに二回戦すればよかった。
まあどちらにしろ俺には関係ないが、セフレであろうが他の男と共有するのは遠慮したい。
「なっ!?  先生じゃあるまいし、そんなわけありま……」
……俺じゃあるまいしってどういう意味だ、こいつは。
反論する実優の言葉はいつもどこかしら俺にケンカを売っているような気がする。
冷たく一瞥すればおとなしく黙り込んだ実優に再度問いかける。
「じゃ、なんで?」
「それはっ、先生のせいですよっ!!」
勢いよく身体を起こして叫ばれた言葉に、眉根が寄る。
「はあ?」
なんで俺のせいなんだよ。
お前が他の男とヤるのと俺と何の関係があるんだ、と視線を投げかけていれば強気な口調のまま実優は続けた。
「昼休みだし、人通るからダメって言ったのに、するから!」
水曜日の昼休み、実優を校舎で見つけて準備室へ連れ込んだ。
人が来たらとイヤがる実優を快楽で説き伏せて最後まで事に及んだのは事実。
声出すなって言っていたのに、そういや派手に喘いでいたな。
「だから、先生の……」
ヤったあと俺は職員室に行き、実優はその場に残った。
………まさか。
「お前、襲われたのか?」
嫌な予感に訊けば、戸惑いながら頷く実優。
肯定に、不快感が苛立ちへと変わる。
「顔、見たか?」
女を襲うなんてどういう神経してんだ。人のものに手を出しやがって。
探し出して警察に突き出してやる。
「えっ!? せ、先生っ!! いいんですっ!! 済んだことだし」
どうしてここで焦るのか。″済んだこと″で済む話じゃないはずなのに、困った様子の実優にまた嫌な予感が起こる。
「おい、実優。知り合いか?」
視線を逸らさせないように正面からその目を見据えるが、結局視線を泳がせている実優は俺の目を見返さずに呟いた。
少しだけ顔を俯かせて。
「………あの私が悪いんだと……。だって優しい友達だし、きっと、私が付き合ってもない先生と……そのエッチなことしてたから……。だから……怒って」
その時のことを思い出しているんだろう。困惑と哀しみと、自己嫌悪が混じり合ったような表情を浮かべている。
だが俺に言わせればどんな理由があろうが、襲ったヤツが悪い。
それに―――。
「付き合ってないけどエッチしてたって言ったらヤられたのか?」
「……は、はい」
頷く実優に、舌打ちしてしまう。
若さゆえなんだろうが、馬鹿というか、なんというか。
「いちいち嫉妬で襲うなよな」
苛立ちのまま考えが口をついて出てしまう。
ある意味そいつも好きな女の喘ぎ声を聞かされて気の毒と言えば気の毒……。
だが自棄になったとしても襲っていいとは限らない。
「いいのか? 犯罪だぞ」
さすがに警察へつき出す気は薄れはしたが、謝罪はきっちりさせなきゃいけないだろ。
こいつのためにも、そいつのためにも。
うやむやにしてまた間違いがあっても困る。
それなのに、この馬鹿実優は首を大きく横に振ってあたふたとし出す。
「い、いいですっ!! 多分…後悔してると思うし…。また友達に戻りたいし……」
手を握り締めて実優は泣きそうに顔を歪めた。
″友達″になんて戻れるわけないだろう。そう言ってしまうのは簡単だ。
それにたとえ言わなかったとしても戻れる確率は少ないだろう。
お人よしなのか天然故なのか、たんにあほなのか……。
襲った相手に対して怒りや恨みなど微塵も感じていなさそうな実優に胸の内で幾度とため息をつく。
「それに襲われたっていうなら先生から何回も襲われてる…………し……」
「………」
………俺も同列かよ。
確かに襲ったけど、無理やり気味だったが……。
……あー、はいはい、俺も襲いましたけどね?
何とも言えないどす黒いものに笑みが浮かぶ。
おそらく凶悪な笑みなんだろう。
実優の顔が『しまった』とでもいうように引き攣っている。
「わかった。お前がそう言うなら黙っててやる。それにしても……」
例え俺が最初襲ったとしても、そのあと身体を重ねたのは同意には違いない。
いまここにいるのだって、どういういきさつであれ拒否せずに来たのはお前の意思。
目を細め、形のいい胸を鷲掴みにする。
「っ…!」
少し力を入れているからか実優は顔をしかめて俺とようやく視線を合わせた。
「お前のことだから……、友達に犯されたのにイキまくったんだろう?」
失くしたくないという友人関係にある男。
そこにたとえ恋情がなかったとしても、友情ありきで心を開いていれば―――こいつはどんなことでも受け入れそうな気がした。快感でさえも。
そしてそれが間違いじゃないことを知る。
一気に赤くなるその頬に、正座でもさせて説教のひとつもしてやりたくなった。
だがまずは―――キスマークをつけられたことにも気づかないくらい感じていただろうその身体に説教をしてやらないといけない。
「図星か。っとに、淫乱だなあ……。そんな淫乱にはお仕置きしなきゃだな?」
″友人″とやらに与えられた快感を思い出すこともできないくらいの快感を与えてやる。
目を見開き、
「……え?はあ〜!?」
絶叫を上げる実優を抱えあげて寝室へと連行していった。











「――――っ、やぁ―――っ」
お仕置きはバイブブラとローター利用。
イけないようにギリギリの快感を与え続けたせいか、ひと際でかい喘ぎ声を最後の絶頂とともに叫んだかと思うと実優は意識を飛ばしてしまった。
「……ッ」
俺も同時に達してしまう。だが食いちぎるように締め付けてくる膣内と、さんざん焦らしていた実優の痴態がエロすぎたせいか吐きだしたのにもかかわらずにあっというまに硬さを取り戻してしまった。
「……やばいな」
ゴムを替えずにそのまま数度ゆっくりと腰を押し付ける。
意識を失っているはずなのにそのたびに実優の身体は小刻みに震えている。
「おい、実優?」
起きろ、と言葉のかわりに強く打ちつけてみる。
眉を寄せて小さな喘ぎをこぼしているが、目は開かない。
「……どーすっかな」
一瞬迷ったがヤっていれば起きるだろうと判断して、手早くゴムを替えるとまた実優の中へと自身を埋め込んで3回戦に突入した。
――――……結局最後まで起きることはなかったが。
「おい。……おい。…………どんだけ爆睡だ」
生まれた姿のまま乱れたベッドの上でいまは丸くなって寝ている実優。
その頬をつねったり引っ張ったりしてみるが起きる様子はない。
そのまま寝かせておいてもいいが行為中に潮まで噴いたせいで体液やら汗でベトベトになった身体のまま放置するのは俺がいやだった。
しかたなく抱き上げて風呂はいることにした。
「………重い」
起きているときはたいして重くも感じない。逆に軽い身体も、脱力しきった今の状況は重いし洗いずらい。
起きればいいと思いながら、身体だけでなく髪まで洗ってやったのに一向に目が覚める気配はなかった。
ぐったりとはしているがそれでも心地よさそうに眠っている実優の表情に尊敬の念さえ覚える。
意外に神経が図太いのか、そんなにまで疲れ果てたのか。
なんにせよ結局風呂から上がっても、さらには髪を乾かしてやってもまったく反応のない姿を見て、実は息をしていないんじゃないかと心配になりさえした。
もちろんただ寝ているだけだったが。
「おい、もういいだろ」
ベッドへと寝かせて、その頬を軽くたたく。
だがシャワーやドライヤーかけてもダメだったんだから、この程度で目が覚めるわけもない。
時計を見れば午前1時。
ゆっくりと夜の時間を楽しむはずだったのに、どうしてこうなってしまったのか。
ため息を吐きだしながら実優の隣へと滑りこむ。
相変わらず穏やかな寝息を立てている。ほんの少し開いた唇。
寝顔は行為中のエロさを微塵も感じさせないくらいにあどけなく普段よりも幼ささえ感じる。
「……よく寝やがって」
鼻をつまんでみると少しして苦しくなったのか手で払いのけられた。が、やっぱり起きる様子はなかった。
この俺を放置しやがって……起きたら覚えてろよ。
寝ている間になにかしといてやろうかとも思ったが、気持ちよさそうに眠るその表情に俺まで眠くなってきて気づけば目を閉じてしまっていた。