HAPPY BIRTHDAY!! 6

内湯でさっと汗を洗い流して、露天風呂に入った。
もう7月。梅雨時期だから蒸し暑くて、お湯も熱めだからすぐにのぼせちゃいそうな気がするけど、山だからか夜の空気は涼しくって心地よかった。
先生と二人並んでゆっくり足を伸ばしてお湯につかる。
「いい気持ち!」
客室専用だから自分だけのお風呂って感じで、すごくリラックスできる。
マンションのお風呂も広いけど、露天風呂は解放感があってそれも新鮮。
「たまには温泉もいいな」
一緒に入るときはかなりゆっくりめに入るけど、基本的にはいつも早風呂な先生。
……一緒に入るときって……まぁ先生が余計なことをするから長風呂になっちゃうだけなんだけど。
「ほんと。温泉大好き。また来たいね」
「まだ帰ってもないのに次の話か?」
「だって、そう思ったんだもん!」
意地悪そうに笑う先生を横目ににらむ。
やっぱりさっきプレゼント渡した時の、やたら優しい先生は一瞬のことだったみたい。
「ま、―――いつでも行きたいとき連れてってやるよ」
だけどなんだかんだ言って結局いつでも先生は優しい。
「……うん」
ふにゃっと笑って先生の肩に頭を乗せて頷いた。
「そういえば、もう新婚旅行から帰ってきたのかな?」
ふと思い出して先生を見上げる。
「とっくに帰ってきてるだろ。確か5泊の予定だったはずだ」
「そっかぁ。楽しかったかな。あーでもほんと……綺麗だったなぁ、お義姉さん」
新婚旅行に言ってるのは先生のお兄さんとその奥さん。
6月の最後の日曜日に身内だけで挙式をしたんだけど、私もお呼ばれして素敵な式を見ることができた。
先生のお兄さんはとっても優しそうで知的なひと。奥さんもものすごく綺麗な人で、少し歳の差はあるみたいだったけどとってもお似合いだった。
「それに全然お腹目立ってなかったし!」
奥さん……いつかは私のお義姉さんになるんだけど、いま妊娠6カ月だったかな?
それで急いで挙式だけあげることになって、とりあえず身うちだけでお式をしたみたい。赤ちゃんが生まれて半年くらいしてから大々的に披露宴をする予定なんだって。
松原グループの跡取りだし、お義姉さんも社長令嬢だからやっぱりしなきゃいけないらしい。
「そうか? 太ってただろ」
妊婦さんなんて全然見えなかったお義姉さんに、先生は失礼なことをしれっと言う。
「太ってないよ! すごくウエディングドレス姿綺麗だったじゃない!」
パステルグリーンのシンプルなドレスを身にまとったお義姉さんにみんな見惚れてた。
「それに先生結構感動してたくせに」
教会で誓いを立てる二人を、先生は感慨深そうに見つめてたのを思い出す。
「……感動とは違う。疲労感だ」
「は? 意味分かんない! 素直じゃないんだから。でもほんと素敵だったな。お義兄さんとっても優しそうだし」
「…………お前は勘違いしてる」
ため息混じりに先生が首を振る。
「兄貴が一番の腹黒だぞ。優しいとは無縁だな。騙されるなよ?」
「……先生。あ、わたっか。お義兄さんが結婚して寂しいんだ?」
「そんなわけあるか」
即答した先生はまた深いため息をついて私の腰に手を伸ばしてきた。ぐっと引き寄せられて先生の脚の上に座る形になる。
背後から抱きしめられて、そのまま先生の胸板に背中を預けた。
「でも―――確かにドレスは綺麗だったな」
「だよね!」
「ドレスが、だぞ」
「………」
先生って本当に素直じゃない、って言おうとしたら、先生が私の左手を持ち上げて薬指と―――そこにある指輪を撫でる。
「ドレス、着たいか?」
少し笑いを含んだ声が耳元で響いて、くすぐったさとその言葉の意味にドキドキしてちょっと身動ぎしてしまう。
「……もちろん……着たいよ?」
一応……"婚約"してるんだし、まだ高校生だから数年先になるだろうけど、いつか絶対着たいって思ってる。
もちろんそれが先生の隣であるように信じて。
先生は指輪を撫で続けながら私の肩に唇を押し当てた。
「いくらでも着せてやるよ」
当たり前のことのように言ってくれる先生に嬉しくって胸がギュっとなった。
「……うんっ」
大きく頷いて、先生とキスしたいな、なんて振り返ろうとしようとしたらその前に先生の手が動き出した。
「っひゃ、せんせ!」
太ももを撫で始めて身体がビクッとなってしまう。
掌全体で太ももを優しく触れてくる。
先生の唇が首筋に押し当てられたかと思うと、低い声で囁かれた。
「先生、じゃないだろう?」
もう片方の手がぎゅっと胸をつかんだ。まだたちあがってないその先端をきつく引っ張られる。
「っん、……晄人」
小さな痛みに眉をひそめながら先生の名前を呼ぶと、摘まれていた力は弱まって太ももを這う手と同じように掌全体で胸を揉み始めた。