HAPPY BIRTHDAY!! 2

「おまたせ!」
校門から少し離れたところに停まってた先生のBMW。
助手席に乗り込むと、私服姿の先生がサングラス越しに私を見た。
「早かったな」
「走ってきたもん! っていうか、なんで私服? 仕事は?」
片手に煙草を持ってた先生はそれを吸いながらふっと笑う。
……なんかそれが当たり前なんだけどすっごく大人で色気ムンムンに見えてドキドキしちゃう。
なんて、私って変態!?
「あー、今日は特別早上がり。この前の土日は休日出勤しただろ。それで今日は仕事切り上げと明日休みになった」
言いながら先生は車を発進させた。
「え? 休み?」
「ああ。珍しく智紀がまともなプレゼント寄越した」
ハンドル操作しながら先生が一枚のプリントを見せてくれる。
そこには地図と―――。
「……旅館?」
「そ。温泉旅館。部屋をとってくれてるらしい」
「温泉!」
目を輝かせちゃうと先生が私の方を少し見てニヤって笑った。
「客室露天風呂付だそうだ」
なんのニヤッ、なのかな、って一瞬冷や汗かいたけど、それよりも露天風呂がお部屋についてるっていうのにびっくりしちゃってテンションが一気に上がる。
「お部屋についてるの!?」
「そうだ」
「うわー! すごい! 楽しみ!」
「嬉しいか?」
「うんっ!! さすが智紀さん! 気がきくよね、智紀さん! やっぱりステキ、智紀さん!! あ、智紀さんにお礼のメールしなきゃ! 電話がいいかな?」
「………」
先生の親友の智紀さんとはもう何回か一緒にご飯食べたりしてる。
知的なお兄さんって感じで、すごく優しくてかっこいいし気さくな人。
智紀さんやっぱり先生と仲良しなんだな〜。こんな素敵なプレゼントくれるなんて、って思いながらケータイを取り出したらなぜか先生に横から取られちゃった。
「先生?」
きょとんとして先生を見るけど、先生は無表情でハンドルを握ったまま言った。
「わざわざ連絡しなくていい。もう俺がちゃんと礼は言ってるからな」
「えー、でも」
「いいんだよ」
なぜか軽く睨んでくる先生に、意味がわかんなくって口を尖らせる。
だけど先生は気にもとめずに、それどころか片手ハンドルにして私の頬っぺたをつねってきた。
「いひゃい!!」
「バカ実優」
ものすっごく頬っぺたを引き伸ばされてジタバタ抵抗したらようやく手を離してくれた。
ヒリヒリする頬っぺたをさすりながら先生を睨みつける。
「もう! なんでつねるの!? 痛いよ、バカ先生! それに片手ハンドルは危ないんだから!」
怒っていることをアピールするように強い口調で先生をなじってると、赤信号で車が停まった。
先生がゆっくり私を見て、薄く笑った口元にちょっと悪寒がした瞬間―――。
「……んんっ!!!」
がっちり後頭部を掴まれて、キスされた。
噛みつくように唇を塞がれて無理やり舌が割って入ってくる。
ざらりとした舌が咥内を這いまわって、私の舌をいたぶるようになぞって、吸い上げて。
「んっ、……っふ」
激しすぎるキスに口の端から唾液がこぼれてしまう。
頭がぼーっとして身体が熱くなってきたとき、先生が離れていった。
信号はもう青になったみたいでまた車は発進しだした。
キスの余韻でふわふわしちゃってる。ちらっと先生を見ると機嫌はなおっているみたいだった。
車道でいきなりキスしてくるなんて!
そう思いながらも、嫌じゃないからなんとなく先生に手を伸ばしたら、正面を向いて運転してるのに、それに気づいてくれた。
ギュッと繋がれる手。
片手ハンドルは危ないよ、って私が注意したのに。
もうちょっとだけこのまま手を繋いでいたいな―――ってギュッと先生の手を握り返していた。