『おまけのおまけ』







 個室を出て会計へと向かう。
 寄り添う綾に笑みを向けながら、何気なく店内に視線を走らせる樹。
「…………」
 思わず歩みが止まり、緩んでいた顔を強張らせる。
 樹の視線の先には、こちらを見て大きく手を振る一組の男女。
 スーツ姿の男と、私服姿の若い女。
 もとい、司とヒカル。
 ニヤニヤニヤニヤとしか形容しようのない笑いを浮かべた二人は「おーい」とでも言うように手を振っている。
 なぜここにあの二人がいるのか。
 その答えはあの表情を見れば一目瞭然。
(……あいつら)
 眉間を寄せ、ぎろっと一睨み。
「せ……。樹?」
 立ち止った樹に、怪訝そうに綾が視線を向けてくる。
 はっと我に返って樹はあの二人が綾の視界に入らないようにした。
「悪い。なんでもない」
 そう言って綾を促す。
 もう振り返らなかった。
 そんな中で、樹は携帯電話が二度震えるのを感じた。
 それはメール受信。
 二通のメールに目を落としたのは、翌日のことだった。


 ちなみに、内容は――――。


『件名 えろ教師!
 綾先輩、私服めっちゃくちゃ可愛いですぅ!!!
 あー! 綾せんぱ〜い!
 エロ教師には気をつけてくださいねえぇぇ』


『件名 ロリコンめ!
 ぐああー! うらやましーぜっ!
 俺に綾ちゃんのお友達紹介してっ!!!
 送り狼になるなよ〜!!
 しっかしお前のデレデレ顔マジ笑えるー!!!』


 樹は無表情にその二通を即刻削除したのだった―――。






 
 
 おわり☆






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2009,7,31