secret 83 Unconsciously

「お前も変な女だな―――」
重苦しい沈黙が少し落ちた後、先生が小さく笑った。
「普通の女は優しくしてほしいって言うぞ?」
「………」
「まぁ、別にいいけど」
先生は私から手を離す。
だけど今度は腰に手が回って引き寄せられた。
そしてぐっと腰を持ち上げられて足がほんの少し浮く。
先生の手がスカートの裾から中へ入ってきて、パンツを引きずり下ろした。
「え、ちょ……っ!!」
そして私の両脇に手を差し込むと、ぐいっと持ち上げて白いタイル張りの広めの洗面台の上に座らせた。
「先生!? きゃっ!」
一気に脚が大きく広げられる。
パンツは右足の先で引っかかってる状態。
だから―――丸見えになってしまってるっていうことで……。
「や、なに!?」
「ナニ」
「は? えっ、や!!」
先生が身体を屈めて、私の中心に息を吹きかけて、割れ目を指先で撫でてきた。
「せんせっ!!」
先生の手を止めようと腕をつかむけど、先生は気にすることなくそのまま触り続ける。
「手、どけろ」
片手で退けられて、片手は二本指で浅くナカに入り込む。
「や……っ!!」
ぺろ、っと先生の舌が突起を舐めた。
びくん、身体が震えるのを先生が薄く笑って眺める。
そしてナカの入り口を開くように動いてた指の隙間から、くちゅって水音が響いてきた。
「―――濡れてきたな?」
くちゅくちゅ、少しだけナカへと指を進めて指でかき回しながら先生は立ちあがった。
「……っ、んっ」
じわじわと蜜が溢れはじめてるのがわかる。
くちゅくちゅ音が増すたびに、先生の指がゆっくりナカに入る混んでいく。
「……ん……っ…ぁ」
「実優、舌」
「……や……っ」
「ヤ、じゃないだろ?」
ぐちゅぐちゅ。
先生の指がナカのイイトコを擦る。
「んっ、ぁん……」
「気持ちよくなりたいんだろ」
もう片方の手が、私の顎をつかんで、また上を向かされる。
先生はいつもの悪い顔をしてて。
でも………。
言われた言葉は私には『―――――』って聞こえて。
唇をゆっくり開いた。
先生の舌が熱く絡んでくる。
もう何度も絡ませたソレは、それだけで、体温が上がってく。
ぐちゅぐちゅと奥へ奥へと埋まっていく長い指。
私のナカを確かめるようにゆっくり膣壁を這いまわる。
たまに親指がぐにぐにと突起を擦って、そのたびに身体が小さく跳ねてしまう。
「んん……っ……は」
キスの合間に堪え切れなくって喘ぐけど、すぐにまた唇を塞がれて。
気持ちいいけど苦しくって先生の胸にすがりつくように抱きついてしまう。
「……っ」
這っていた指は今度は3本に増えて、ぐちゅぐちゅと激しい抜き差しを始める。
どんどん熱くなってく。
アソコが疼いて先生の指をぎゅうぎゅう締めつけてるのがわかる。
「イイ?」
くちゅっと唾液を絡めたキスを中断させた先生が私の額に額をつけて、笑いを含んだ声で訊いてくる。
その声にどうしてか、どうしようもなく―――興奮をあおられる。
「……イ……イ、です……んっ……ぁ…っ!!」
「ナカめちゃくちゃ熱い。腰も揺らしてるし。やっぱ淫乱だなぁ、実優は」
激しく指を動かしながら、もう片方の手が顎から首筋に落ちて、背中に回る。
背骨を辿るように指先がゆっくりと降りてく。
それだけなのに、ゾクゾクって快感が走ってしまう。
「せ……ん、……せ…ぇ…っ」
「んー?」
「っあ、んんっ、やぁ!」
気のない先生の返事がした瞬間、親指が突起に振動を与え出して、でも他の指はそのまま抜き差しされてて。
ぐちゅぐちゅ、水音が激しくなるのと同時に、快感の波が襲ってくる。
「あ、ぁ……っ、んっ……ふ……っ」
「イキそう?」
「……っぁ、ゃん、っあん、イ……ちゃ」
ぐらぐらチカチカぞくぞく、快感がぐちゅぐちゃと身体の中心を焦がしてく。
「じゃあイケよ」
そう囁く声は、私の耳元でして、舌が耳の孔を犯して、熱い吐息に、脳が蕩けて。
ぐちゅぐちゅ、ナカを犯す指の激しさが一層増して。
舐め上げて離れていく舌を感じた次の瞬間、耳を甘噛みされて―――。
「せんせ……ッ、ぁあ、んゃあ! イっちゃうっ……っ!!」
全身を甘い痺れが襲って、絶頂を迎えた。
先生にしがみついたまま荒く息を吐く。
甘い余韻にまだ身体が疼いてる。
でも先生はそれ以上してこない。
どうしたんだろうと、少ししてから先生を見上げてみた。
途端に先生と目が合って、息苦しさを感じる。
先生は無表情に私を見下ろしてた。
「あの……」
「ん?」
「……あの……最後まで……その、しないんですか…?」
「あぁ」
小さく先生は笑った。
「この部屋は本当に休憩させてもらうために借りてるから、ここでスるのはちょっとな。それに今ゴムだってないし」
あ……、そうだよね。
このお部屋はわざわざ無理言って貸してもらってるんだし。
―――なに、バカなことを考えてるんだろ。
どんどん心が冷静になってく。
先生につっかかってしまってたこと、言ってしまったこと。
いろいろ考えると、こうしてもらうことを……望んでたのかなって思ってしまう。
なんとなく気まずさと、そしてずっと先生にしがみついたままだったのを思い出して離れようとした。
だけど私の背中にまわされた先生の両腕はぴくりとも動かなくて、抜け出せない。
だからといって先生の背にまた手をまわすことなんてできなくなって。
どうすればいいんだろう、って俯いた。
先生の胸のあたりに頭を預けるようになってしまう。
そこから先生の心臓の音が響いてくる。
それは速くもなく、遅くもなく、一定のリズムを保っていて。
表情だけでなく、胸の内まで余裕で冷静なんだってわかる。
先生が私のことなんかで取り乱したりなんて、するはずないのに。
余裕すぎる先生に、悔しさみたいなものを感じちゃう。
「私も―――大人になりたい……」
すぐに泣いちゃわないように。
揺るがされないように。
流されないように。
寂しさに負けないような―――大人になりたい。
「……まだ、シたりないのか」
呆れたようなため息が頭上でこぼれた。
「……え? ……そんなこと、言ってないんですけど」
戸惑いに先生を見ると、一気に口を塞がれた。
深いキスに、ついさっきまで疼いてた身体はまた熱を帯びてしまう。
「んっ……」
ちゅ、と唇が離れて、先生は私の目を見つめる。
「ごちゃごちゃ考えるなって言っただろ? 今日はもう余計なことは考えるな」
「……別に、わた……」
「これ以上ぐだぐだするなら、ここ出たあと車ん中で最後までスるぞ?」
「………」
「もう外暗いし、山の中だからな、車の中でスるのはなかなかのスリルだぞ? なんか出てくるかもな?」
「………」
「あともちろんお前が上だからな? 手加減してペース落としたりしたら、帰ってから覚えてろよ?」
「………」
「まぁカーセッ……」
「わ! わかりましたっ!!」
黒い笑顔で言ってくる先生に、冗談じゃなくって本気だってことを感じて慌てて首を大きく横に振った。
「も、もうなにも考えません!」
「いや、別にかまわないぞ? 俺もいま中途半端だし?」
「いやいやいやいやー!! やだ!」
「やだってなんだよ」
「暗いの怖いし!」
「暗くなけりゃ車でもいいのか」
「え?」
「エロ実優」
「ちが!!」
「淫乱」
「違いますー!!!」
ニヤニヤ笑う先生の胸をぼかぼか叩く。
いつものような他愛ないやり取りに―――ちょっとホッとして、ちょっと笑ってしまった。
「あっそ。泣き虫実優」
ふっと先生は目を細め、私を洗面台から下す。
「んじゃ、とりあえず夕飯なに食べるか考えてろ」
そう言って先生はもう私の返事を待たずに、手を引っ張って部屋から連れ出した。


手をつないだまま、一階で道隆さんと椿さんに会って。
まだ30分も経ってない間に上の部屋で、先生にされたことがふとよぎって顔が赤くなってしまう。
もちろん聞こえてないだろうけど、恥ずかしくってちょっとパニック気味に今日のお礼を言った。
「またいつでも来てくださいね」
道隆さんは最後までとても優しい笑顔で、ほっと心が落ち着く。
「実優ちゃん、よかったら住所教えて? お客様に季節のお便りだしてるの。よかったら実優ちゃんにも送らせて?」
「あ、はい! よろこんで」
椿さんは綺麗で気さくで素敵な女性で、私もいつかこんな大人な人になれたらなって憧れちゃう。
道隆さんと椿さんのように素敵な夫婦に―――私もいつかなれるのかな?
「それじゃぁ、気をつけてね? 今度はゆっくり泊まりに来てね」
笑顔で2人に見送られてカメリアを後にした。
もう外は真っ暗で。
でもお昼を食べたのは遅かったからお腹は空いてなくって。
カメリアで少し寝たのに、また眠くなって。
結局私は帰りの車の中でずっと眠ってしまってた。