secret 40 終業式と保健室

次の日、和くんは約束通り学校に来てくれた。
ちょっと緊張したけど、和くんの態度はいつもとかわらなかったから、私もいつも通り。
でもちょっとだけ、前より優しくなった気がする。
捺くんともちゃんと話したのか、ぎこちない雰囲気とかなかったから一安心。
久しぶりにみんなでお昼ご飯を食べれて楽しかったし。
でもそういえば、もう学校も24日の終業式で冬休みに入っちゃうんだ、って思ったら寂しくなった。
『冬休み、遊ぼうね』
って七香ちゃんたちは言ってくれたけど、お正月はみんな忙しいだろうなぁ。
そんなことを考えながら終業式前日の23日。
祝日だし、年末だしで私はひとり朝から大掃除をした。
3LDKのマンションをひとりで使ってるから、掃除も大変。
ゆーにーちゃんの寝室と書斎はもう何か月も使われてない。
でもいつでもゆーにーちゃんが帰ってきても大丈夫なようにお掃除は週2はしてるから、そんなにほこりとかはかぶってない。
毎年いつもはゆーにーちゃんが仕事納めをして正月休みに入ってから一気に大掃除してたんだけど。
ゆーにーちゃん、元気してるかなぁ。
最近電話ないし……。
仕事忙しいのかな……。
一通り大掃除を終えた夕方。
ダイニングテーブルに座ってお茶を飲みながらケータイを眺めてた。
ゆーにーちゃんと最後に電話したのは転入前日の夜。
心配して電話してきてくれたゆーにーちゃん。
ゆーにーちゃん。
そろそろ声聴きたいな……。
明日はイブだよ?
向こうで誰かと過ごすの??
はぁ………。
やばい。
なんだかすっごくマイナス思考になっていっちゃってる。
ずんずんテンションが落ちていきそうだったから強く頭を振って、いやな考えを振り払う。
pipipipi...
頭を振りすぎてちょっとクラッとしたときに携帯がメールの受信音を響かせた。
もしかして
ゆーにーちゃん!?
いまゆーにーちゃんのこと考えてたから、もしかしてだなんて都合いいことを考えながら
携帯を見てみると。
「………なんだ、先生か」
松原先生でした。
先生からは先週末突然あった電話以来メールもなにもない。
だからいまが初めてのメールなんだけど。
先生からのメールなんてろくな内容じゃない気がする。
だいたいあんな変態エロ教師がいてあの学園大丈夫なのかな?
先生にバレたらキレられそうな失礼なことを考えながら先生からのメールを開いた。
『明日、前の学校の制服持ってこい』
「………は……ぁ?」
メールはその一文だけ、他にはなんにも書いてない。
「意味分かんないんだけど……」
そう思って、『なんでですか?』って返事をする。
間をおかずにまた受信音が鳴って、『持ってこい』それだけ。
『だからなんでですか?』
もう一度メールしてみたけど、今度はいくら待っても返事はこなかった。
ううーん……。
前の学校の制服は白のセーラー服。
合わせて半年も袖を通してない制服はまだ真新しい。
っていうか、なにするんだろう。
嫌な予感しかしないから、正直持って行きたくない。
でも。
「持って行かなかったら……、それはそれで嫌な予感するしなぁ」
悩みながらも結局私は明日、制服を持っていく準備をしちゃったのだった。