secret 22 金曜日はパラダイス!?

「……あの」
「2分10秒の遅刻」
前を見たまま先生が言う。
「…………だってしょうがないじゃないですか! 急にあと10分て言われたって無理です!」
軽く先生をにらむ。
先生は素知らぬ顔をしてる。
「……あの、それでどこ行ってるんですか」
「マンション」
「……どこの?」
「俺の」
「…………………な、なんで!?」
「なんで? 今週で仕事落ち着くっていっただろ」
…………聞いたような?
でも、それで?
「なんだ、覚えてないのか」
先生は舌打ちすると横目に睨んでくる。
「…サッパリ」
へらっと笑って答えると、さらに睨まれた。
こ、怖い………。
車が赤信号で止まる。
「準備室で初めてヤッたとき」
ヤ………。
顔が急激に赤くなるのがわかる。
先生はそんな私に気づいてニヤリと意地悪な笑みを浮かべた。
そして先生の手が私の首に回って引き寄せられる。
「きゃっ! ………っ…」
先生の唇に唇を塞がれる。
荒々しく舌が割り込んできて、口のナカを蹂躙していく。
「っ…ふ……ぁ」
だけどキスはそんなに長くはなくて、青信号にストップをかけられる。
「満足するまで抱いてやる、って言っただろ?」
そう、先生はゆっくり口角を上げた。
そういえば…確かにそんなこと言ってた気がする…けど。
でも、どっちかっていうと……。
「満足するまで先生がヤりたいだけじゃ……」
心の中で呟くつもりが、声になって出てた。
ハッとして口を押さえる。
隣からはどす黒いオーラが漂ってきてる気がする……。
「……あとで覚えてろよ」
「…………ていうか! なんで私の住んでる所知ってたんですか?」
先生の怖すぎる一言を聞かなかったふりをするように、訊いてみた。
実際不思議だし。
だけど先生はあっさり答える。
「お前のクラスの住所録見た」
「……ストーカー…?」
「………実優」
低い低い先生の声に、またしても失言しちゃったことに気づく。
「タダで帰れると思うなよ…」
冷たく笑う先生に私はもうなにも喋らないでおこう、と口を噤んだ。
車は私のマンションから15分ほど走って止まった。


高層マンションの地下駐車場に停めた先生の車の横には一目見て高級車とわかる車が二台停まってる。
周りを見ればベンツとかいろいろだから、高級マンションなのかもしれない。
それにしても……先生の軽自動車がやけに浮いて見える。
もちろんそんなこと先生には言えないけど。
「なんだその目……、言っとくが隣の二台も俺の車だからな」
軽自動車と高級車を交互に見すぎてたからか、先生がにらむようにして言ってきた。
「え? えぇ!?」
「うるさい。早く来い!」
さっさと歩き出す先生のあとを慌てて追う。
手入れの行き届いたエントランスからエレベーターに乗り込んで着いたのは20階。
そして先生の部屋に入ったんだけど、とにかく広くって、モデルルームかな?ってくらいにキレイだった。
二十畳以上はあるリビングにドーンと置かれた大きなテレビ。
L字型のソファー。基本的にはモノトーンで、ところどころブラウン系の家具が置かれてる。
そのせいかクールなんだけど、居心地のよさも感じる雰囲気になってた。
「風呂入ってくる。テレビでも見てろ」
キョロキョロ部屋の中を見回してた私に、先生はそう声をかけるとリビングから出て言った。
しょうがないから言われた通りにテレビをつける。
見たいドラマの前にあってる番組が終了間際だった。
やった! ドラマ見れそう。
嬉しくて、それからは先生のことなんて忘れてテレビに釘付けになっちゃってた。