secret 147  最終章/Eternally  

キスのあとはしばらく部屋でまったり過ごした。
仕事の疲れもあるのか、先生は30分くらい仮眠してた。
それから少しだけ2人でカメリアの周りを散策したりして。
そしてディナーの時間になって、レストランに入った。
お正月のときとはちがってフルコース。
道隆さんと椿さんが挨拶にきてくれて、料理の説明をしてもらったけど正直よくわからなかった。
マナーだって全然私はダメダメで、ちょっと恥ずかしかったけど、でもすっごく美味しかった。
オーベルジュは料理を楽しむレストラン主体っていうだけあって、もうほんとうにほっぺが落ちそ料理ばっかり。
「………にやけすぎ」
先生から呆れられてしまった。
それなのに――――。
「えええ? デザートないの?!」
食後出されたコーヒーを飲みながら、いまかいまかとデザートを待ってたのに先生は私の夢を見事に打ち砕いた。
「コースはこれで終わりだ。ほら、部屋戻るぞ」
「……デザート」
他のテーブルではデザート出てるのに、なんで私だけないんだろう。
「注文してないんだから、いくら待ったって出てこないぞ」
ため息をついた先生が立ち上がって、戻るぞと私に手を差し伸べる。
「……なんで注文してないの? ……ケチ」
「……誰がケチだ」
「先生ー!」
そんな言いあいをしながら手を繋いで部屋に戻った。
だけど先生は部屋の電気をつけないで、ずんずん中に入っていく。
暗い部屋。
なのに――――、一か所だけ、明るくて。
それがなんなのか近づいていくうちにわかって。
「………っ」
びっくりして、歩くのを止めてしまった私を引っ張って先生はソファーに座らせた。
ソファーの前にあるテーブルには火がついたローソクの立てられたケーキがあった。
ホールケーキのそれはふんだんにイチゴが飾り付けられてて、ハッピーバースディのプレートが飾られてて……。
「―――な、んで?」
「念願のデザートだろ?」
呆然としてる私をからかうように目を細めて覗きこむ先生。
そして私を引き寄せると軽くキスをして、甘く囁いた。
「誕生日おめでとう、実優」
「………っせんせぇ」
びっくりして、嬉しすぎて、涙が出てしまう。
「でた、泣き虫実優」
「びっくり涙だもん……!」
涙を隠すように先生の胸に顔をうずめる。
「なんで……誕生日知ってたの?」
「自分の女の誕生日くらい知ってるさ」
「……私、先生の誕生日知らない」
「7月7日だ」
「………」
つい吹き出してしまう。
だって、まさかの七夕!?
笑ってると、先生からものすごく睨まれて、視線を逸らした。
「どうやら実優はプレゼントいらないようだな?」
先生は口角を上げて、意地悪く目を細める。
「え、えぇ……っ? い、いる!!」
慌てて叫ぶ。
「さーて、どうしようかなぁ」
「先生ー!!」
口を尖らせて先生を見つめると、ようやく先生はふっと笑って小さな箱を私に差し出した。
「どうぞ、実優ちゃん」
「………ありがとうゴザイマス……」
プレゼントに目を奪われながら、お礼を言う。
あきらかにジュエリーが―――指輪でも入ってそうな小さな箱に胸が高鳴った。
ピアスかもしれない。
そう思いながらも、指輪だったら、なんてドキドキしながら箱を開けた。
「まだ高校生だし、普段つけれそうなやつにしといた」
先生の声とともに目に映ったのは―――指輪。
ピンクゴールドに小さな花のモチーフと小さな赤紫の石が乗ってる。
「これは牡羊座の守護石のルビー」
「……ル、ルビー!?」
「ああ。でも別に大きくないし。この程度の大きさならつけてても大丈夫だろ」
先生は言いながら指輪をケースから取り出すと、私の指につけた。
―――左手の薬指に。
「ちゃんと毎日つけろよ?」
「……うんっ」
嬉しくって、先生にぎゅっとしがみつく。
「あ。忘れてた。ほら、ロウソク消さないと、やばそうだぞ」
あっと思いだして見てみたら、確かにロウが結構溶けだしてる。でも長いロウソクだから、高さはまだまだあった。
そして今日二回目のバースディケーキに灯る火を吹き消した。
暗い室内。
カチっと音がしたかと思うと、また火が灯る。
でもそれはケーキじゃなくって、テーブルに置かれてたキャンドルだった。
先生はケーキを切り分けて、皿に盛ってくれた。
だけど私には渡さずにフォークに突き刺すと、私の口元にもってきた。
ニヤって笑う先生に、ちょっと照れながらも口を開けて食べさせてもらった。
「美味しい!」
ふわふわスポンジにカスタードクリームと生クリームが2層で挟みこまれてた。
もっとと口を開ける私に先生がケーキを食べ与えてくれながら、教えてくれる。
「このケーキ、椿さんが作ったんだぞ」
「ふぇ!? 椿しゃんが?」
「……食べながら喋るな」
「…………ごめんなさい」
ごくんと飲みこんでから、まじまじとケーキを眺める。
「いままで食べたケーキの中でベスト3に入りそうな美味しさだよ?」
「椿さんはデザート作りはプロの腕前だからな」
「ほんと美味しい! あとでお礼と、作り方教えてもうらおうかな」
「ああ。喜ぶと思うぞ、椿さん」
喋りながら、またケーキを食べさせてもらって。先生も二口くらい食べながら、1カット分食べ終えた。
でも美味しすぎてもうちょっと食べたいなー。なんて、ケーキを見つめてたら、不意に顎を掴まれた。
そして塞がれる唇。
「んっ……」
歯列をなぞって、口内を味わいつくすように這い回る先生の舌。
「………甘いな」
しばらくして解放された私を見つめながら、先生が小さく笑う。
キャンドルの灯りだけが照らす中で見る先生はいつもよりカッコよく見えて、自分でのろけてるなんて思いながらもドキドキしちゃう。
それに嬉しくって―――誕生日をお祝いしてもらえるなんて思ってなかった分嬉しすぎて。
気づいたら自分から先生にキスしてた。
「………なに、誘ってんのか?」
「え? ちが……っ! ん!」
妖しい笑みを浮かべた先生に唇を塞がれて、失敗した!って思ったけど―――。
でも一週間会えなかったから、私は目を閉じてぎゅっと先生に抱きついた。