EXTRA GAME / Delusion 2

「転入してきて保健室来たことなかったんだからしょうがないじゃないですかー」
放課後の保健室にやってきてブツブツ愚痴っているのは実優。
確かにこいつが転校生だということをすっかり忘れていた。
散々待たされて電話してみればちょうど保健室近くをうろついていたので無事確保したのだ。
明日から冬休みということもあって、今日は部活もなく生徒たちもさっさと帰路についているから校内は静かだ。
保健室を訪れるものなんてもういないだろう。
すでに鍵をかけ、準備は万全。
「……先生校内禁煙ですよ?」
煙草をふかす俺に実優が咎めるように視線を送ってくる。
「俺はいいんだ」
その言葉にあからさまに呆れたようなため息をつく実優。
っとに、こいつは、天然のくせに意外に気が強いというかなんというか。
「……先生、夏木先生と知り合いなんですか?」
「あー。あいつ、俺の大学時代の後輩。で、俺のダチのカノジョ。あいつらが付き合ってるのは俺のおかげだから、俺に絶対服従なんだ」
今回はちゃんと餌も与えたけれど。
しかしこの俺にロリ○ン発言したのを考えれば、やる必要はなかった。
チケット分と問題発言分とあのカップルからそれなりの代償をもらわなきゃならんな。
「なんですか、絶対服従って…」
吉見カップルのことを考えていた俺に、実優は強張った顔をしている。
「そのまんまだよ。それより制服持ってきたか?」
あいつらのことはどうでもいい。
それよりもいまは実優が手に持っている紙袋の中身が問題だ。
昨日の夜、持ってくるように指示した例のモノ。
実優は紙袋に一瞬視線を落として、複雑そうな表情で俺を見てくる。
「はい……。持ってきたけど、なにするんですか?」
不審者でも見るような眼差しは無視し、用意していた実優への昼食を渡した。
「とりあえず、これ食え」
不思議そうに目をしばたたかせながらも実優は受け取って中を覗き込んでいる。
中身はサンドイッチ。
よく利用する某ホテルのレストランでわざわざ作らせたものだ。
「昼食。食べていいぞ」
腹が減ってたら、楽しむものも楽しめなくなる。
サンドイッチに目を輝かせている実優に言うと、笑顔で「いいんですか?」と訊いてくる。
早く食べたそうな様子が単純で笑いそうになってしまう。
「ああ。それ食ったら、制服前の学校のに着換えろ」
機嫌のいいまま流されてしまえばいいが。
「はー……い? ……せ、先生?」
笑顔で頷きかけた実優は眉を寄せた。
「なんだよ」
「なんで、着替える必要があるの?」
「前の制服でヤりたいから」
昨日智紀からもらったAVと白衣を見て思いついた今日のゲーム。
せっかくの保健室プレイなら他校の制服のほうが一層面白いような気がした。
実優の前の学校の制服はセーラー服。
ブレザーよりセーラー服のほうがヤらしく感じるのは何故だろうか。
「………帰ります」
俺の邪な思考を遮るようにポツリ呟き回れ右で帰ろうとする実優。
「却下」
もちろんあっさり返し、その腕をつかむと引きずり寄せた。
華奢な身体を抱きあげて、膝の上に座らせる。
煙草を消してからサンドイッチを取り出した。
「実優、ほら。あーん」
逃げ出さないようにとっとと餌付けしておくか―――。
実優にサンドイッチを食べさせてやる。
素直に口を大きく開けてかぶりついた実優は「おいひい」と口を動かしながら満面の笑みになった。
単純なヤツでよかった。
このサンドイッチをわざわざ用意してやったことをアピールしつつ、とっとと食わせてしまおうと「ご褒美の前払いだ」と言って口に突っ込んだ。
無理やりすぎたせいか、頬が一杯になって飲み込むのも大変そうになっている。
買っておいたジュースを渡してやって、落ち着くのを待った。その間にヒマつぶしに実優の身体を触っていると、思いっきりにらんでくる。
「先生! 私食べたら帰りますよ!?」
「あぁ? なんでだよ。わざわざ保健室まで借りたんだぞ?」
帰すわけないだろう。
夏木はともかく、保健室の早崎女医を誤魔化すのには一苦労した。
その分、こいつには頑張ってもらわなきゃいけないからな。
腰に手をまわして逃げられないように拘束すると、実優は相変わらず不満そうに口を尖らせてる。
「意味分かんないんですけど」
「実優。お前今日何の日か知ってるか?」
「今日は……イブ?」
「そうだ。イブだよ。バカップルたちがハメまくる日だよ」
聖夜じゃなく性夜じゃねーのか、ってくらいに恋人たちが愛を確かめるのかなんなのか、ホテルが満室になりまくる日。
イブの重要性なんてもの俺にとってはまったく関係ないが、ヤリまくってるやつらの中で俺だけ実家でパーティに行かなきゃならないなんて面白くないことこの上ない。
「それなのに、俺は実家主催のパーティに出なきゃならない。しかも明日まで拘束。可哀想だろ?」
ため息をついて言えば、驚いたように俺を見てくる。
「ぱ、パーティ?」
その反応に実優が転校生だったことを思い出した。
「あー、お前知らないのか。俺、この学園の理事長の孫」
「え、えええっ?! せ、先生っておぼっちゃまなんですか?」
「一般的には」
「………どうりで」
驚いていたのをなにか納得するように頷いている実優に冷たく笑いかける。
「………なにが?」
やっぱりこいつは俺にケンカ売ってるな。
顔をひきつらせて肩を竦める姿に、さらに追い詰めるように「覚悟しろよ?」と囁いてやった。
青褪める実優に続けて追い込みをかける。
「……とにかく、だ。俺が可哀想だろ? イブに実家に帰んなきゃなんねーなんて。
俺だってヤりまくりたいだろ? イブだから先生にサービスしてあげなきゃって思うだろ?」
「………」
実優は眉を寄せて黙りこむ。
仕方ない―――。
名を呼び囁きながら、その耳元を舐め上げた。
ビクッと身体を震わせる実優に構わず舌を這わせ、秘所と同じように舐めてやれば明らかな反応を見せてくる。
やっぱり言うより身体にわからせてやるほうが近道だな。
耳の弱さをからかいながら耳からうなじへとキスを落としていく。
「せ、せんせっ。人来たらどうするんですか?!」
「来ないよ。もう生徒たちだって帰ってるし、保健室になんて誰も来ないだろ」
「で、でも……」
っとに、こいつは……。
どうせよがるんだから、とっとと流されればいいのに。
「わかった。選ばせてやるよ。全身縛られてソフトSMか。制服着替えて、ノーマルプレイか」
しょっぱなからグダグダつまずいてたら楽しむ時間が少なくなってしまう。
仕方なしに二択で選ばせることにした。こうすれば制服を選ぶだろうから。
拒否しないよう冷たいにらみも付け加えたら、ようやく「……着替えます」と頷いた。
行ってこい、とベッドのほうへと押しやって俺も智紀プレゼントの白衣を着用して実優の準備が終わるのを待った。